第九話 根尾西谷川はU (下)


       根尾西谷川 大河原上部の流れ<1980>
圧倒的な自然の力を前にして
チッポケで無力な我が身を改めて
思い知り身が竦む。

今まで乗り越えてきたはずの
幾度かのピンチも 多分に 
付いていただけだったのだろう。

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崩落後を過ぎると往来の絶えた
国道は僅かばかり下りに掛かる
どれほど歩きつづけたのだろう
倉見街道の難所も もう出口が
見え出す頃だ・・。

間も無く現れた 吊り橋の架る
取水堰堤を 右手に見送ると
明るく 駄々広く開けた川原にと 
その姿を変えた根尾川がつづく。
広い川原を 如何にも根尾川らしい色をした流れが 緩やかにときには幾筋にも分かれその表情を
変えながら流れ下るのを 右手えと望みながら尚も上流部を目指し歩を進めると 程なく黒津の集落と
出会う ここで越波方面に向かう道と別れ 大河原を経て温見峠にと駆け上がる国道へと足を進める
人気の無い廃校と黒津の家並みを過ぎ そろそろかなと渓への下り口を捜しだす  植林の作業道を
辿りこの年始めてになる 久しぶりの西谷川の流れへと立てた   火照った足に渓水が心地良い。

      大河原地区での釣り<1980>
日帰りの予定では帰路を考えると 釣を出来る
時間はさほど多くは無い 手早く身支度を済ませ
ダイワの三間超硬竿に0.8号の通し なに訪れた
釣り人はそんなに多くはない ごつい仕掛けでも
渓魚には 気にもならんだろう。

目前の落ち込み駆け上がりに エサのミミズを
打ち込むと同時に ゴンと向こう合わせでの当り
まずは開きの木っ端を始末してと考えていたので
思わぬサイズに あわてて竿を煽る 合わせは
完全に遅れたが それでも仕掛けは獲物の顎を
しっかりと捕らえているようだ。

一気に落ち込み発泡下へと走る魚 竿も折れよ
と言わんばかりのファイトに 思わず付いて走る

 これだよ  これ・・。

この川に魅了される理由のひとつに 掛かる
魚の引きに有る 一言で言ってしまえばパワフル
おまけに魚品も超一級とくる。

無事取り込む事の出来た この日の第一号は
九寸ばかりの天然あまごだ 八号サイズの
ハリは がっちり獲物の上顎を捕らえている。
足元の岩へ頭をうちすえ”しめ”てから ふきの
葉で包み魚篭代わりの布袋へと収める。

少しでも奥まで行って見たいと 遡行を早めると
目指してた 根尾あまごや大和岩魚はどの流れ
からも姿を見せ 心躍らせてくれる。

       ある日の根尾西谷川での釣果
流れを割り夢中で釣り続け 気づくと太陽は西の山並みへと傾き掛けている 急がなければ ずっしりと
重い布袋を下ろし 釣果の処理を済ませ 高い位置の国道を目指しきつい斜面を這い上がる。

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根尾川の魚では 独特の容姿をした大和岩魚が目を引きますが 上流地帯で釣れる天然あまごも
素晴らしいときめきをプレゼントしてくれます 押しの強い荒瀬が最高のドラマを与えてくれるでしょう、

                                             
                                                        OOZEKI